コラム『Netflixがやってくる!』でもご紹介した、Netflixなどへの納品ファイル形式である「IMF(Interoperable Mastering Format)」。 今号のフォトロンコラムでは、この「IMF」の作成/読み込みに対応した、ROHDE&SCHWARZ社「CLIPSTER」を使用して、IMFコンテンツの作成方法を動画とテキストで徹底解説します。
Netflix などへの納品ファイル形式「IMF」とは?
「IMF(Interoperable Mastering Format)」は、デジタルシネマパッケージ(DCP)規格をベースにした放送/パッケージメディア向けのファイル受け渡しの標準規格だ。Netflixをはじめ、FOX、ディズニー、ソニーピクチャーズなどが、この「IMF」を納品ファイル形式として採用している。
IMFのデータ構造については、『Netflixがやってくる!』の回で詳しく解説しているので、ぜひご覧いただきたい。
今号のフォトロンコラムでは、ROHDE&SCHWARZ社のマスタリングシステム「CLIPSTER」を使用して、Netflix納品用「IMF」ファイルの作成方法を動画とテキストで徹底解説する。
Netflix用「IMF」コンテンツ【基本編】 マスターの作成方法
設定
オリジナルバージョンのためのプロジェクトのセットアップ
- クリップをBINに取りこみ、タイムラインのアウトプット設定をおこなう。
- ターゲットディスプレイ[ Rec.709、ヘッド(ビデオレンジ) ]、プレーンガンマ[ 2.4 ]に設定し、タイムラインを作成すると、IMFマーカーが生成される。
- IMFマーカーは、追加/編集でき、コンポジション内の時間軸に関する要素もマーカーで表示される。
- IN/OUTポイントを設定し、[ IMFデリバリーツール ]を使い、IMFパッケージを作成する。
IMFの作成
[IMFデリバリーツール ]を使用したIMFパッケージの作成
- [ IMF Delivery tool ] で、Netflixの映像搬入形式[ Application #2 Extended ]を選択する。
※ 最新の納品仕様は、Netflixパートナーセンターで確認できる。
- ここで使用している映像は、1.78 (16:9 アスペクト)4K映像のため、[ 3840 x 2160 / 23.976 ]、カラースペース[ Rec709 ]、トランスファーファンクション[ Rec709 2.4ガンマ(BT1886) ]を選択する。
※ RGBからXYZへのカラー変換マトリクスも[ Rec709 ]を用いる。
- ソース設定では、パラメータ変更が適用されない“バイパス”部分が赤色文字で表示される。ソース内容をここで確認する。
- オーディオ設定をおこなう。Netflix納品仕様規定7.2で指定されている[ 5.1 ]、配信用ステレオ、[ 48kHz ]を設定する。
※ 個々のオーディオトラックファイルには、固有の名前を付与でき、個数の制限なく追加も可能。
- JPEG2000の設定では、[ BCP Level5 ]を選択し、CPL(コンポジション・プレイリスト/XMLファイル)、名前/レンダリング先を設定し、レンダリングを実行する。
Netflix用「IMF」コンテンツ【応用編 (1)】
サプリメンタルバージョンファイルの作成方法(英語版/ドイツ語版を作る)
IMFのデータ構造については、『Netflixがやってくる!』の回で詳しく解説しているが、IMFコンテンツ最大のメリットは、映像トラックや音声トラックの再生順序情報を持ち、各エッセンスファイルとメタデータを紐づけするXMLデータ『CPL』と、トランスコードパラメータ『OPL』の互換性の高さと最終アウトプットの自由度の高さといえる。
たとえば、海外映画コンテンツを日本市場向けに納品する場合、オリジナルバージョンファイルに、『日本語音声』『日本語字幕』『日本語版CPL』を追加(サプリメンタル)し、最終フォーマットへ変換する際に、各アウトプットに合わせた『OPL』を作成するだけで、異なる言語のコンテンツ作成や、「吹き替え」「字幕」などのバージョンニングが完成する。
ここでは、英語版クリップ(オリジナル)からドイツ語版クリップのバージョンニングの操作を解説する。
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英語版クリップとドイツ語版クリップをタイムラインに配置
- バージョンファイルの"ベース"となるCPLを開き、新しいトラックに映像クリップ/素材を読み込む。
- 英語版の[ 5.1 ][ ステレオ音声 ]を削除し、ドイツ語版の[ 5.1 ][ ステレオ音声 ]をタイムラインに置く。
- ドイツ語版ビデオインサートを英語版の上に重ね合わせる。「CLIPSTER」は、ソースタイムコードを元にドラッグ&ドロップで簡単にクリップを配置できる。
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ソースクリップのカラーフォーマットを確認
「CLIPSTER」では、ソース/アウトプット共に“バイパス”となっている部分は黄色で表示される。意図した通りの場合には問題ないが、詳細な仕様が既定される「IMF」では、適切なカラーフォーマットを設定する必要がある。 今回使用するクリップは、マスターと同じく[ Rec709 ]で作成されているため、[ ガンマ2.4 Rec709(BT1886) ]に設定する。
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最初のバージョンファイルを作成
- [ IMF Delivery Tool ]で[ Supplemental IMP ] を選択する。
- 「CLIPSTER」は、IMP読み込み時にオリジナルCPLが参照するクリップのフォーマットを自動で判別する。IMF規格はフォーマットの混在を認めていないため、ビデオの設定の部分は同じ設定にし、オーディオの設定をおこなう。
- 新しい言語(ドイツ語)に適切なトラック名を付け直し、適宜設定を確認する。
- 以上の操作で新しいバージョンファイルが完成する。これを必要なだけ繰り返し、バージョンファイルを作る。
Netflix用「IMF」コンテンツ【応用編 (2)】
IMFコンテンツ管理 IMFパッケージの統合方法
ここでは、複数言語バージョンのIMFを統合する方法を解説する。複数言語バージョンの複数のコンポジションは、それぞれ独立したパッケージになっており、QCが済んだ後は、それらのパッケージを一つに統合できる。
コンテンツを統合することで、バージョン管理が容易になるといったこと以外にも、共通の素材(クリップなど)を複数バージョン分持つ必要がないため、余分なストレージ容量を使わずにすむといったメリットもある。また、ドラマなどの連続コンテンツの場合には、コンテンツの連続性管理も確実におこなえるようになる。
- [ パッケージマージツール ]を選択し、CPLを含むフォルダをドラッグ&ドロップするか、手動でXMLファイルを追加する。
- [ Hard link with Copy fallback ]を選択し、複数のIMPを統合する。
- 以上の操作で、ひとるのフォルダ内にすべてのエレメント、すべてのバージョンの特定のセット向けのプレイリストが含まれたパッケージを、余分な容量を使用することなく作成できた。
今号のフォトロンコラムでご紹介したIMFパッケージは、今後、HDRコンテンツにおいても応用されるといわれている。
次号では、HDRコンテンツの取り扱いについて、ご紹介したいと思います。ぜひご期待ください。
「IMF」対応システム ROHDE&SCHWARZ「CLIPSTER」
ROHDE&SCHWARZ CLIPSTER
DCPマスタリングシステムとしてリリース後、2015年4月、4K IMFマスタリングに対応し、「IMF」の作成/読み込みが可能なシステム。また、DCP、AS-02、AS-11にも対応しており、必要に応じていずれかの形式を作成/読み込みができる。
1つの形式から別の形式に切り替えることもできる非常に自由度の高いシステムになっている。
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