2014年2月7日~2月23日の17日間で、7競技98種目が開催されたソチ冬季五輪。日本は、長野に次ぐ8個のメダルを獲得し、大いに日本を沸かせました。世界の一流アスリートの活躍をリアルタイムで見ようと、眠い目をこすりながらTVの前で応援した人も多かったのではないでしょうか。
今号のEVSニュースレターでは、冬季五輪史上最大の200カ国の人々に感動を届けたソチ五輪放送設備の全貌をご紹介します。
ソチ五輪では、2001年に設立されたOBS(Olympic Broadcast Service)が、ホストブロードキャスターとして各国の放送局が利用できる国際テレビ信号を提供する役割を担っています。
オリンピック公園付近に、国際スポーツ大会開催時の一時的な放送センターであるIBC(International Broadcast Centre)と、山間部に第二の放送センターであるMBC(Mountain Broadcast Center)が設けられました。OBSは、450台以上のカメラを用い、1,300時間以上もの試合・セレモニーなどの映像でONC(Olympic New Channel)※1 を制作し、IBCが世界中の80局以上ものRHB(Right Holding Broadcast)※2 に、その映像を送信しました。
IBCとは別に、スノーボードパークやアルペンスキーセンターの近くにMBCが設置され、9,000平方メートルのMoutain Clusterの土地にポストプロダクション設備を併設し、放送権利を持つ放送局が利用できるようにしていました。
さて、各競技場に配置された中継車はどのようなワークフローだったのでしょうか?現地ロシアのテレビプロダクション会社 Panorama社は、約2年前からソチ五輪に備えて、「24カメラ対応中継車3台」「16カメラ対応中継車4台」「10カメラ対応中継車5台」などの新しい中継車設備を整え、EVS XT3サーバを始めとするシステムが、その中核を担っていました。大型中継車には、通常のスローリプレイやハイライト送出の用途としてXT3サーバと、ノンリニア編集機「Apple FinalCutPro」も導入されており、EVSシステムとノンリニア編集システムの相互連携を実現しています。
24カメラ対応 中継車x3台 |
XT3サーバ(7台) マルチカメラ収録とライブスロー送出、クリップ作成管理、プレイリスト送出 |
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XedioDispatcherを接続することで、ENGファイルをGUI上でプレビューでき、必要な素材を短時間でXT3サーバにファイル転送可能。簡易カット編集機能も搭載。 | |
Xedio CleanEdit 簡易編集が可能なノンリニア編集システム。編集後の素材はXT3にリストア。 |
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IPDirector+IPEdit |
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Apple FinalCutPro+IPLink 「FinalCutPro」のプラグインツール「IPLink」で、ニアラインストレージ内の素材をインポート。 |
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16カメラ対応 中継車x4台 |
XT3サーバ(5台) |
IPDirector+IPEdit |
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10カメラ対応 中継車(5台) |
XT3サーバ(3台) |
XT3内素材のアーカイブ |
また、Panorama社は、中継車の他に「Panorama Media Office」での収録/放送も行っており、そのワークフローは、XSサーバ15台により構築されていました。
インジェスト | XSサーバ15台(60チャンネル分)で回線収録。「IPDirector」を使い「XstoreSAN」にリアルタイムインジェスト。 |
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編集 | 簡易ノンリニア編集「Xedio CleanEdit」と、「IPLink」がインストールされた「Apple FinalCutPro」で編集 |
ブラウジング |
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プレイアウト | XSサーバ4台と「IPDirector」により送出。「IPDirector」は、ストレージ内にある完パケのXSへのファイル転送や、プレイアウトのコントロールを行う。 |
ソチ五輪では、合計約1万1千人ものオペレータやエンジニアが、現地にて昼夜を問わず働いており、リオ五輪では、約倍の数になるといわれています。しかし、開催都市にとって、このような膨大な数のスタッフを必要とする放送システムは、今後不可能と考えられており、現地スタッフ数の削減を検討する必要に迫られています。
これを受けて、ホストブロードキャスターであるOBSは、少人数でより多くのコンテンツを放送することを、今後の戦略の一つとして打ち出しています。この戦略を実現する手段のひとつとして、MDS(MultiChannelDistribution service)の存在があります。
MDSとは、24時間途切れることなく、ハイライト、インタビュー、記者レポートといったニュースプログラムをRHBに提供するサービスです。今回のソチ五輪で、OBSのMDSチームは、7チャンネル分のプログラムを常時衛星を介して、広範囲のRHBに最高水準の映像を提供しました。さらに、このMDSには、プラットフォームをシェアし、電話回線の予算を削減できるという大きなメリットもあります。
また、今回のソチ五輪において、MDSは、開催地での制作作業に限られた従来の放送システムではなく、自国にいながらにして、RHBがIBC内のMAMにリモートアクセスできる「リモートプロダクション」を構築し、現地でのヒューマンリソースの削減を可能にしました。
このリモートプロダクションの実現には、テープベースのワークフローではなく、ファイルでの素材のやり取りを中心とするファイルベースワークフローがシステムの根幹に必要となります。少人数でより多くのコンテンツを放送するスポーツ放送制作環境の実現には、今後このような制作環境の変化が伴って行くでしょう。
2020年の五輪では、HD放送と4K/8K放送の両方のワークフローが確立していくと予想されます。
4K/8K放送はもちろん、リモートプロダクションを組み込んだスポーツ放送制作ワークフローを実現するために、EVSは、中継現場での圧倒的な信頼性と安定性を誇る「XT3」サーバを中心に、多彩なアプリケーションを組み合わせて、スポーツ制作に最適なファイルベースワークフローをご提案いたします。
2014年3月18日(火)~19日(水)の2日間、フォトロン永田町オフィス(東京都千代田区)にて、現場に行かなくてもEVSの収録素材を編集・ハイライト作成できるワークフローをご紹介する「EVSリモートプロダクションセミナー」を開催しました。
当日は、多くのスポーツディレクター様、ハイライト編集管理オペレータ様などにご来場いただき、好評のうちにセミナーを終了しました。
2014年4月7日~10日、米国ネバダ州ラスベガスにて開催される世界最大の放送機器展覧会「NAB Show 2014(NAB2014)」に出展します。EVSブースでは、XT3/XSサーバを中心に、4つのソリューションを展示します。
EVSスポーツ スポーツ番組向けのソリューション
EVSエンターテイメント
ステージショー、リアリティTV、トークショーや音楽番組向けのソリューション
EVSメディア インジェストからアーカイブまでの一括ソリューション
EVSニュース ニュース番組向けのソリューション
4月6日 Broadcast Management Conference
4月8日 Broadcast Engineering Conference
EVS Sports division Luc Douex
「セカンドスクリーンを用いた次世代スポーツ番組制作について」
NAB Show 2014会期中は、フォトロン現地特派員によるNAB2014ムービーレポートをお届けする予定です。
是非お楽しみに!!